第67回公演『なきこえ』-医療訴訟の是非とある医師の葛藤-
生まれて来るはずだった子、そしてその母の命を守ることができなかった医師。
法廷に立ち、彼は問われる。
それは事故だったのか?防ぐことはできなかったのか?
何を、なぜ、裁かれるのか?
命のやり取りに刑罰を科す法と、ケースによって変わる医療。
姿の異なる両者のかかわり。
失われたこえをめぐる裁判の行方を、今日、あなたは見届ける。
「なきこえ」という言葉に二つの意味を込めました。一つは「泣き声」。それには妻子を失った父親の泣き声、医療行為により母親と赤ん坊を死なせてしまった医師の叫ぶ声、悲痛な事件に対して飛び交う世論の嘆く声といった様々な泣き声があります。もう一つは「無き声」。これから耳にするはずだったであろう赤ん坊の産声や母親になるはずだった妻の無念の声があると思います。
亡き被害者、遺族、世論、そして医師をめぐる様々な苦悩と葛藤が重なり合い、なき声となって今にも聞こえてくるような気がして、今回このようなタイトルを考案いたしました。
医療をとりまく立場によって考え方の食い違いが生まれ問題が複雑化する中唯一「なきこえ」だけが同じように響き合う、この矛盾する歯がゆさについて深く考えていただけたらと思います。