其の弐 一年生講義マニュアル
ここでは一年生が履修すると思われる法学部専門科目の講義について、その概要や特徴などを紹介しています!
目次
①司法制度論
②民事法入門
③刑事法入門
④法と歴史
⑤日本近代法史
⑥西洋政治思想史
⑦憲法Ⅰ
⑧民法総則
⑨刑法Ⅰ
(1)講義の概要
「シセイロン」と呼ばれます。
主に民事司法制度について学ぶ講義です。大雑把に例をあげると、民事裁判の基礎について学んだり、裁判官や弁護士について学んだりします。
(2)講義の特徴
レジュメ:先生のホームページに掲載されています。
板書:主にスライド
温厚で優しい先生が教えてくれます。
実際に現役の弁護士の方が来てお話をしてくれる「スペシャル講義」もあります。
(3)試験の特徴
過去問にそった問題がでることが多いです。
半分くらいは一般常識+六法を引けばわかる問題です。因みに法学部の法律系科目(憲法、民法、刑法など)の大半は試験の際にポケット六法が貸与され、必要に応じて条文を見ることができます。
(4)勉強方法
各自主ゼミに講義ノートが残っている(少なくとももぎさいにはあります)ので、テスト前はそれを参照するのがいいかと思います。
教科書は購入するのもいいですが、先輩から譲ってもらうと家計に響きません。筆者はなぜか2冊持っているので1冊はあげます。「教科書を 買わず飛び込む 司制論」という有名な川柳もあります。
(1)講義の概要
名前の通り、民事法の基礎を学びます。
「民事法」とは、市民間の権利義務関係及びそれに関する紛争解決を規律する法分野
…だそうです。(by Wikipedia)余談ですが、大学のレポートでWikipediaを引用したりすると一発アウトです。
本題に戻りますが、民事法というのは個人間や企業間など、公権力が関わらない部分における諸々の決まり事を定めている法の総称です。(またまた余談ですが、公権力と市民との関係について定めた法は「公法」と呼ばれます。憲法が代表例ですね)
講義は過去の具体的な事例を数例見ながら、民事法の大原則について解説される形で進められます。
(2)講義の特徴(3)試験の特徴
昨年は「物権法」を担当されていましたが、その時はレジュメに沿って講義が進められ、判例を読むときには板書が詳しくなされていました。試験ははじめに語句説明(ある用語について数行で説明させる問題)が出題され、次に事例問題が出題される形式でした。
他の科目のお話なので、あくまでご参考までに。
(4)勉強方法
講義で取り上げる具体的な事例について、自分の言葉で説明できるようするのが良いと思います。法律を学ぶ上で基礎になるような事柄が多いので丁寧に学習することをおすすめします。
(1)講義の概要
「刑事法」というのは犯罪と刑罰に関する法の総称のことです。具体的には「刑法」「刑事訴訟法」「刑事政策」「少年法」などについてその基礎を学びます。
(2)講義の特徴
レジュメ:有
板書:無
(3)試験の特徴
授業で扱った事例問題の他、刑事法の原則や訴訟手続きの基礎について簡単に記述する問題が出題されます。
講義の内容から幅広く出題されますが、きちんと勉強していれば高得点も狙えます!
(4)勉強方法
レジュメの事例問題を中心に勉強するのが良いと思います。その事例問題の論点を意識しながら理解していく(トピックと結びつけて事例問題を理解する)と、試験のとき非常に論述しやすくなります。
講義では刑法の分野に時間の多くが割かれますが、担当教員は刑事訴訟法(捜査や公判の手続きを定めた法律)がご専門なので、試験では訴訟法分野もしっかり出題されます。
(1)講義の概要
「ホウレキ」と呼ばれます。
「西洋法制史」という分野が専門の教授が担当する講義です。教授曰く、「絶滅危惧種」の分野だそうです。
東北大学では「法と歴史」と名のつく講義がIとIIの2つありますが、1年生で履修する「法と歴史Ⅰ」では、近代法の原則を3回くらいに分けて講義された後、それを踏まえた上で、古代ゲルマン法における訴訟について学んでいきます。なお、法「の」歴史ではございません。詳しくは講義で。
(2)講義の特徴
レジュメ:時々資料が配布されます
板書:ほぼ無いです。教授が話すことをひたすらノートにとります。
お話しが面白いので、1限の授業なのにあまり眠くならないです(笑)
ちなみに前半3回くらい行われる近代法の原則についての講義は、同時期に行われる司法制度論や民事法、刑事法入門の良い復習になったりします。
(3)試験の特徴
ちょっと特殊です。
まず問題は語句を穴埋めする「予問」と、記述式の「本問」に分かれており、予問で正答率8割を突破した答案のみ、本問が採点されます。
(4)勉強方法
採点は正直厳しめです。
ただ講義内容は面白く(主観ですが)、進み方も整然としているので、自分の講義ノートや配られる重要語句のレジュメを繰り返し読めば自ずと頭に入ります。
因みに講義内容は毎年ほぼ一緒なので、先輩などに聞くとコツを教えてもらえたりします。
(1)講義の概要
「ニッキン」と呼ばれます。
法制度の歴史について学ぶ「法制史」と呼ばれる分野の講義です。
この講義では「法制史」の中でも特に、明治時代以降の日本における近代法の成立の仕方、またその特色などを学びます。具体的に言えば、明治維新後の日本が法制度を作り上げる過程において西洋法の影響をどのように受けたのか、そうして成立した法律は現代とどう違っていて現代にどう影響しているのかなどを学ぶのです。
(2)講義の特徴
レジュメ:有
板書:少々
オーソドックスな授業だと思います。
(3)試験の特徴
基本的に3行ほどの語句説明3つ+論述1つという構成です。過去問に沿った問題が出ることが多いです。
日本史の予備知識があるとある程度書けます。
(4)勉強方法
講義で登場した重要語句について一通り説明できるようにしておくのが良いと思います。筆者はざっくりとした理解のために、高校時代使っていた山川の用語集を使用していました。また過去問で出た語句説明、論述に関しては完璧にしておくことを推奨します。(最低でも過去3年分くらい)
現行の制度と比較しながら学習して行くと特徴が明確に見えてくるので学びやすいと思います。また、他の分野の学習にも役に立ってきます。例えば離婚制度1つとっても、現在の制度と比較しながら理解することで現行民法(詳しくは立ち入りませんが、離婚制度は民法の中でも【家族法】の領域に分類できます)の深い理解に繋がります。
法制史の分野は一見「直ぐに役に立つ」ことが少なそうですが、意外と他分野の学習にも繋がってくるのです。そういった気概で以って臨むとかなりとっつきやすいのではないでしょうか。
⑥西洋政治思想史(鹿子生教授)
(1)講義の概要
マキァヴェッリの『君主論』を読み進めながら、その理解に必要な知識や政治学の基礎概念を学ぶ授業です。『君主論』はその名の通り歴史上の君主や君主国についての分析がなされている本です。
(2)講義の特徴
レジュメ:無
板書:スライド形式
『君主論』を読む講義です。毎回次の講義までに読んでくる箇所を指定され、そこをを読んでいる前提で講義が進んでいきます。法学部の講義にしては珍しく、学生が発言を求められる(挙手制)こともあります。
(3)試験の特徴
もしかしたら年によるかもしれませんが…試験には『君主論』のテキストを持ち込めます。
内容は政治学の基礎的な原則や『君主論』が書かれた時代背景などの知識問題から、「マキャヴェッリがこの章を書いた意図は何か」みたいに講義で教授が話したことを論述させる問題まで幅広く出ます。
(4)勉強方法
しっかり『君主論』を読む、というのが第一です。早いうちにすべて読んでしまえば講義内容が入りやすくなります。この講義に限りませんが、明確なテキストがある講義はそれを精読するのが一番です。筆者は教授の本や論文をちょこちょこ読んで講義内容を補足していました。
「高校の倫理の授業と同じかな」と思って侮るなかれ。この科目に限らずですが、論述式の問題は当然採点者は担当教員なので、その先生の支持する学説や解釈に沿った回答作りが前提です。試験と言うのはあくまで「その講義の中身をどれほど理解出来ているか」を問うものなので(たまに「講義内容の批評を書いても良い、ただし根拠を示すこと」とか「自分の意見を論ぜよ」みたいな出題の仕方をする先生もいらっしゃいますが)。
よって自身が受験勉強などで身につけてきた知識のみでなく、色んな考えを柔軟にとり入れて、それを如何に自分の言葉で文章にできるかが、単位取得の第一歩だったりします。
(1)講義の概要
東北大学では、憲法をIからⅢの3つの講義に分けて勉強します。
憲法Ⅰは主に、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の3大原則を判例に基づきながら勉強します(ただ人権については2〜3年生の憲法Ⅲで詳しくやるので、ここでは基礎だけです)
(2)講義の特徴
レジュメ:たまに配られる。
板書:ほとんどないです。
レジュメの内容に沿って講義が進みますが、レジュメには大まかな内容しか載っていないため、ノートを取ることが必須です。指定された教科書・判例集を参照しながら、教授の話を聞きながらメモを取るという感じになると思います。
(3)試験の特徴
論述です(結構長くかかされます)。
判例について聞かれる問題が多いです。
(4)勉強方法
自分で取ったノートに沿って勉強するのがいいと思います。授業で触れた教科書や判例集のページをメモしておくと、勉強するときにすごく役立ちます。
重要判例については、その概要・論点・意義などを一通り説明できるようにしておいたほうが良いです。筆者は重要判例を自分の言葉で説明したノートを作っていました。
憲法を学ぶと憲法改正に関連した時事が理解できるようになります。それを学部外の友人や家族にしたり顔で話してやると、非常に気持ちよくなれます。また、憲法を学ぶとなんだか世の中がわかった気分になってきます(傲慢以外の何物でも有りませんが)。こういった目に見える小さな成果を意識することはモチベーションの維持につながるので意外と重要です。
⑧民法総則(櫛橋教授)
(1)講義の概要
「ミンソク」と呼ばれます。
「民法」と一口に言っても、その条文数は千を超えます。よって講義も分野ごとに細かく分かれて開講されます。
1年生が受講する「総則」とは、民法の第一編の部分のことです。(ポケット六法買ったら見てみて下さい)
権利とは?意思とは?いやそもそも民法で言う「人」って?「物」って?
…と言った具合に、民法全体の一般的なルールや原則を学んでいきます。
(2)講義の特徴
詳細なレジュメが配られます。レジュメにそって授業が行われます。授業で触れた条文は、適宜参照するようにしましょう。
(3)試験の特徴
昨年は、前半は用語説明問題、後半は事例問題が出題されました。
(4)勉強方法
(もはや勉強法ですらないのですが…)これ以後に学ぶ民法関係の分野に共通する事柄を学ぶので、気合を入れて学習することをおすすめします!筆者は民法総則の理解をおろそかにしたまま進んでしまったので今かなり苦しんでいます。勉強法を偉そうに教授する立場にないのです!ご容赦ください。
法律用語、という点にだけ触れておきます。(ミンソクでは抽象的な法律用語を沢山覚えさせられます)
法律用語と聞くと、大変かたっ苦しいイメージを持たれるでしょう。実際その通りですが、「なんか聞いたことある言葉だな」みたいな用語も大量にあります。ただこういうものほど、言葉は知ってるけど意味があやふや、とか、日常の用法と法律学の用法で意味が違う、ということが頻発します。また同じ法律学の中でも、民法と刑法で用法が異なる用語もあります。
語句を説明させる問題は得点源ではありますが、しっかり理解しないと意味、用法を根本から取り違えて大幅減点…ということも起こり得るので要注意です!
(1)講義の概要
刑法は総論(刑法全体に共通する事柄を勉強する分野)と各論(どのような行為が犯罪とされ、どういう刑罰を適用するかが定められている分野)に分かれていて、刑法Ⅰは総論の中でもより基礎的な事項を学びます。
刑法の役割とは何か、犯罪が成立するためには何が必要なのかなど、割と抽象的な議論が多いです。例をあげると「正当防衛」なども刑法Ⅰの分野です。
(2)講義の特徴
レジュメ:有
板書:少し有
授業の進行は緩やかで、適宜レジュメにノートをとることが求められます。
(3)試験の特徴
基本的に論述問題です。刑事法入門と似てるけどそれよりはちょっと深め、みたいな感じです。
学説の説明問題がほぼ大半を占めます!
(4)勉強法
レジュメの説明は厚いのですが、刑法は学説が多く、レジュメだけではすんなりとは理解しきれない部分が出てくると思うので、レジュメと教科書を行ったり来たりしながら勉強することをおすすめします。
教科書については先生から初回授業でいくつか紹介されます。なるべく多く触れてみて(図書館がいいと思います)自分に合いそうなものを選んでみてください。そうして見つけた自分に合いそうな教科書は購入し、他は図書館で補うという形が懐にも優しいかなと思います。自主ゼミの先輩にもらうのもありです。筆者は「基本刑法Ⅰ」というテキストを中心に3冊ほど使用していました。同じ事項に関する議論でも本によって記述の仕方がかなり異なるので、中心テキストで理解しきれなかった部分を他のテキストで補うとかなりスムーズに勉強が進むと思います。
議論が複雑になってくると1人では理解しきれない部分も当然出てくると思います。そんなときはぜひ友人と話し合ったり、先輩に聞いたりしてみてください。筆者の経験ですが、先ず友人と話し合って、自分がわかっていない事がハッキリとわかったらそれを教授に聞いてみる、というのが一番勉強になると思います。