2019 第68回公演『どうか、私を』―被害者に望まれた殺人―
「俺は・・・間違っていたのでしょうか・・・?」
幸せな毎日を送っていた夫婦
そんな中、妻の癌が発覚し、余命一年と宣告される。
前向きに闘病生活を送っていたように見えた二人だが・・・
『生命』と『意思』
『法律』と『感情』
それらが秤にかけられたとき
どちらを、どのように、選ぶべきなのか・・・
今回の公演のテーマである「嘱託殺人」とは、刑法199条においての所謂通常の殺人とは異なり、被害者自身が殺害されることを望み、それを加害者に要請するKとで生じる特殊な殺人の形態です。つまり、嘱託殺人における被害者は、「生命の維持」という、最大限に尊重され、保護されるべき権利を自ら放棄していることになります。自らの意志で、かけがえのない自らの生命を他者に侵害させよう、と決断するためには、平穏な日常の中では中々感じることができない、並々ならぬ思いが必要となるでしょう。
そこで、今回のタイトルは、台詞調にすることでタイトル自体から被害者の思いを直に感じ取って頂けるようにしました。また、言葉の選び方としては、被害者の感情がより色濃く印象づけられることを重視しました。実際に被害者が口に出す言葉としてではなく、あくまでも心の内に芽生えるような言葉として、被害者の内実により迫った飾りのない表現を意識しました。そして、題の末尾を曖昧にすることで、当劇をご覧頂く皆様に被害者意志についてより思いを馳せて頂けるよう願いを込めました。
是非、嘱託殺人という複雑なケースにおいては被害者の生命・意志を法の下でどのように保護し、尊重すべきであるのか、当劇を通して考えを深めて頂ければ幸いです。