2012 第61回公演『ゆらぎ』―震災による内定取消訴訟―
大学生4年生の西沢昂希は、かねてより就職を志望していた企業である自動車部品メーカー「湯口製作所」への内定が決まっていた。
――しかし、突然起きた大地震による津波が同社の自動車部品工場を襲う。
甚大な被害を受けた湯口製作所は経営を立て直すために、既存の従業員の解雇か内定の取消という選択を迫られる。社長の宇佐美雄造は苦悩の末、新規採用内定を取消すという結論を下し、それによって昂希を含む10人全員の内定が取消された。
納得のいかない昂希は、弁護士・崎谷の助言に基づいて労働審判での解決を試みるが、内定取消の決定が覆ることはなかった。
あきらめきれない昂希はついに、内定取消の無効を求め民事訴訟を提起する。
「本当だったら今頃あそこで働けていたはずなのに、なんでこんなことになってしまったんだろう…。」
震災により大きく揺らいだ昂希の命運はいかに―――
2011年3月11日に発生した東日本大震災は東北太平洋沿岸部を中心に日本に甚大な被害をもたらしましたが、徐々に復興への兆しが見え始めているところです。
その一方で今なお震災の影響に苦しむ人々がいるのも事実です。特に法律問題が絡んだ紛争は多くが個別の事情を抱えており、解決までに長い時間がかかるといわれています。
こうした現状を鑑み、私たち東北大学法学部模擬裁判実行委員会は「震災による民事訴訟」をテーマとしてとりあげることで、震災発生時に法がどのような解決策を提示できるのかを市民の皆様にお伝えしたいと考え製作に至りました。そしてまた、街の暮らしが落ち着きを取り戻しつつあるこの時期に、震災が及ぼした影響について、私たちの模擬裁判を通して市民の皆様に改めて考えていただければと思います。